【労働】夏の彼是②「ロックアウト解雇を許さない」


厚生労働省での記者会見 右から全国ユニオンの安部事務局長、鴨会長、筆者

このブログでも何度も取り上げたが、外資系企業を中心に正社員に対する「ロックアウト解雇」が相次いでいる。まだ雇用関係があるにもかかわらず、退職勧奨のターゲットにした従業員から、身分証やセキュリティカードを奪い取り、PCやデスクを撤去し、会社から叩き出してしまうのだ。酷いケースだと勝手に私物をダンボール箱に詰め込み、自宅に送りつける。このような非道なヤリクチが頻発したのは、管理職ユニオン結成以来はじめてのことである。違法性が高いし、人権侵害にもあたるだろう。事実、相談に来たサラリーマンの中で少なからぬ人が心身ともに深いダメージを負ってきている。

この事態は、まだまだ知られていない。そこで7月22日、全国ユニオン東京管理職ユニオン厚生労働省記者クラブにおいて記者会見をおこなった。そして7月25〜26日に労働相談ホットラインを集中開催した。この会見の内容は、毎日新聞の東海林記者が以下のように記事にした。非常によくまとまっているので掲載する。


7月24日10時40分配信 毎日新聞

 「もう会社には入れません」−−。外資系企業で働く労働者が、身分証などを取り上げられ、職場から閉め出される形で退職を強要されるケースが相次いでいる。かつて、労働組合が会社の偽装倒産などに反対し「ロックアウト」で職場を占拠したこともあったが、逆のケースだ。外資系社員の組合員が急増しているユニオンは、「外資系でも当然日本の労働法は適用される。勝手な解雇は許さない」と話している。

 ロックアウト型退職強要の相談が増えているのは、個人加盟の労働組合の「東京管理職ユニオン」(橋本忠治郎委員長)。昨年のリーマン・ショック以降、解雇や退職強要の相談が増え始め、今年に入り特に外資系の相談が増えた。6月までに同労組が取り組んだ団体交渉は約100件に上るが、このうち約50件が外資系の金融や生保、証券、IT関連企業が占める。これまで外資系で10件以上、ロックアウト型の相談があったという。

 ロックアウト型の退職強要は、人事部が労働者を呼び出し、「雇用は終了します。仕事はなく明日から出社する必要はありません」などと告げられる。書面へのサインを拒否すると、その間にIDカードやセキュリティーカードの返却を求められ、拒否してもカードを使えなくして、会社に入れない状態になる。その後、会社で使っていたノートや文具などの私物を自宅に送りつけてくる。

 都内在住でインド資本のIT関連会社で働いていた30代の女性は、理由も明らかにされず退職を強要された。身分証を取りあげられ、数日後に名刺やノートなどの私物が自宅に送りつけられた。組合に加入し、解雇理由を聞いても「能力不足、世界経済の悪化」など具体的な理由はなかった。ロックアウトされると会社がどういう状態にあるのかも分からず、同僚とも連絡が取れず心理的な圧迫が高まるという。この女性も精神的ダメージを受けたという。

 同労組の鈴木剛執行委員は「日本では整理解雇には解雇回避の努力や十分な説明などの要件が求められる。外資の乱暴な解雇に泣き寝入りする必要はない」と話している。同労組では25、26の両日、午前10時から、日本、外資に限らずロックアウトや正社員の退職強要などへの緊急電話相談を実施する。相談電話は(03・5371・5170)へ。【東海林智】