「40歳定年制」が「全ての世代に働く場所を提供する」のか?

11/3、連合会館にて全国ユニオンの10周年記念シンポジウムとレセプションを行いました。各界の多くの皆さんにお越しいただき、感謝申し上げる次第です。

シンポジウムでは、限られた時間でしたが、中野麻美さんと萱野稔人さんから重要な提起をいただくことができました。中野さんは日本における労働市場を捉える上で差別的二重構造を内包していることを強調されました。この点を改善しなければならないということです。また、萱野さんは、データをもとにして「人口動態や経済需要が下降局面の際に、規制緩和政策を遂行すれば逆に経済は縮小する」という主張をされました。経済学者を中心とした世論は、現在の経済危機への対処として「規制緩和が足りない」という主張を繰り返していますが、それは逆効果であるということです。「40歳定年制」や「雇用の原則有期契約化」が「全ての世代に働く場所が提供され、豊さを実感できる社会」を実現することに繋がると主張している「国家戦略会議フロンティア分科会」の報告も、こうした基本的認識のズレが影響しているという話に及びました。

実際に私たちの交渉の中で、40〜50代の社員を「キャリアデザイン部」なるセクションに押し込め、就職活動させることを“業務命令”と称している会社が現れています。就職先を見つけられないと人事考課が下がり、賃金がダウンするのです。就職先を見つけると高い評価をもらって会社を辞める、という最早悪い冗談にすらならない現実があるのです。
しかし、人々が全社会的に受け入れてしまえば、冗談ではなく、「40代での就職活動」=「40歳定年制」が定着することになるでしょう。けれども、多くのリストラにおいて、経営者による買収や投資の失敗、株主への配当やスポンサードの過剰出費などが不問に付され、そのツケを労働者に押し付けている実態があります。労使間の力関係において労働者側の力が弱まり、「こういう景気だから仕方ない」と甘受するサラリーマンが増える中で拍車がかかっています。
だが、それは「仕方ない」ことではないのです。

あらゆる領域で混迷する昨今、人々が「仕方ない」と思うような前提となる思考を一から疑い、繰り返し議論を社会的に巻き起こしてゆくしかない・・・そう決意した、「これからの10年」を展望するシンポジウムでした。