労働者は、自主管理・協同労働の道を選び、奪われた職場を取り戻した

とても嬉しい報告です。

2013年1月30日、東京郊外の甲州街道沿いにあるガソリンスタンドを営む会社が経営者によって破産させられました。労働者は、自らの生活と誇りを守るためユニオンに結集し、職場を占拠し、自主営業を続けました。整備士が多く、整備工場もあり、地域に根強いファンが多かったことから、何者によっても職場を潰すことはできませんでした。


 ↑2013年の職場占拠・自主営業時の写真↑

同年5月、ユニオンの取り組みを理解するスポンサーに入札で買い取っていただき、私たちは労働者自身の協同労働企業(法人格は合同会社)を立ち上げ、賃貸契約を結びました。翌日、労働委員会において残された紛争に決着をつけ、労働者たちは自ら経営するという経験したことがない道に踏み出しました。

それから2年、ついに私たちは、本当に職場を自分たちのものにしました。経営実績を重ね、地元の信用金庫からの融資を受け、土地建物を買い取ることができました。

傲岸な地主経営者は、労働者を酷使し続け、労働者が団結したあの日、会社を破産させました。「誰の手によっても経営困難」と嘯き。

しかし、経営困難なはずの会社を只の労働者が維持し、買い取ったのです。地元生まれ育ちのちょっとヤンキーな車とバイクを愛する兄ちゃんたちが、労働組合員のままで、自主管理・協同労働という道を選び。

8月、現地スタンドで、出資者総会と兼ねて、祝いの場を設けたいと思います。

就労・雇用創出、地域社会に必要な商品やサービスの持続的提供、企業再生や事業承継、こうした今日的課題を解決するための選択肢の一つとして、労働者自身による自主管理・協同労働の制度化を提案します。

私たちには無限の可能性がある。

残業代ゼロ・時間規制廃止提案に対する警戒を呼びかける

日本労働弁護団が4月30日付で「残業代ゼロ・時間規制廃止提案に対する警戒を呼びかける 」と題した声明を発表しました。

私は経営側に立つ人々と話す機会が多くあります。その中で、「クリエイティブな仕事は、労働時間ではなく、成果で測るべき」という意見を聞くことがあります。しかし、そうであれば、一切の時間管理や勤務場所拘束を解除すべきでしょう。まったくオフィスに来なくてもいい、決められた納期に成果物を納品する考えです。また、現在の労働基準法の中でも、専門職の裁量みなし時間制など例外的な定めもあります。しかし、そうした経営者の話を聞いていると、労働者の管理拘束を前提としながら、都合よく成果主義を主張する、すなわち単に人件費を削減したいだけです。
実際に企業においては個人単位で成果を計測できない仕事の方が多いのが実状でしょう。チームプレイ型の業務も多いし、バックヤードの仕事も多い。
そして私たちのもとには長時間労働を強いられて職場で倒れたり、精神疾患を発症する人たちが多く相談に来ています。この実態をみれば、必要なのは労働時間を規制することでしょう。労働時間規制をせずに、カネだけ払わないというのは、まったくムシがいい話でしょう。



残業代ゼロ・時間規制廃止提案に対する警戒を呼びかける

2014年4月30日

日本労働弁護団 会長 鵜飼良昭

 本年4月22日開催の経済財政諮問会議産業競争力会議合同会議において、長谷川閑史産業競争力会議雇用・人材分科会主査作成の「個人と企業の成長のための新たな働き方〜多様で柔軟性ある労働時間制度・透明性ある雇用関係の実現に向けて〜」により、「個人の意欲と能力を最大限に活用するための新たな労働時間制度」が提案された。

 提案の挙げる「Aタイプ(労働時間上限要件型)」は収入にかかわらず、「職務経験が浅い」者、「随時の受注に応じて期日までに履行する業務に従事する」者等、極一部の労働者を除いて労使で自由に対象者を設定できるものであり、ホワイトカラー層を中心に、広範な労働者が容易に対象とされうる。さらに、Aタイプの労働時間の上限を、労基法の定める基準を超えて、労使合意により「柔軟」に設定することを可能にする。また、「Bタイプ(高収入・ハイパフォーマー型)」にあっては、収入要件(その下限すら法律の条項として規定されず、省令等により国会の審議なく下げられる可能性をはらんでいる)さえクリアすれば、労働時間の上限が一切設けられない。

提案はAタイプにあっては、「年間労働時間の量的上限等については、国が一定の基準を示す」「強制休業日数」を定めるとするが、1日、1週単位での際限なき長時間労働については手当がなく、強制休業日数が遵守されなかった場合の刑事処罰などの効果については何ら言及がない。Bタイプに至っては、導入企業は「利用者の就労状況を把握し・・・健康管理に活用する」ほか、なんの拘束も受けない。いずれの類型についても、労働者の休む時間を確保する措置がおよそ欠如していると言うほかない。

提案は、新たな労働時間制度の適用を、労働者の同意にかからせているとするが、労使の交渉力格差がある中で、使用者から制度の適用を迫られた労働者がこれを拒否することは事実上不可能に近い。結局、提案は広範な労働者を対象に、労働基準法所定の1日8時間、1週40時間、週休1日の労働時間の上限を緩和ないし撤廃し、長時間労働に対する直接的規制をなくすとともに、「時間外労働」「深夜労働」「残業代」などという概念そのものをなくし、長時間労働に従事させた労働者に対する労基法で義務づけられている賃金の支払いを免除するものである。それは、2007年に「残業代ゼロ法案」「過労死促進法案」として世論の批判を浴び葬り去られたホワイトカラーエグゼンプションの再来であるどころか、それよりもさらに労働者の長時間労働に対する保護を後退させる最悪の「残業代ゼロ」「過労死促進」提案にほかならない。

 労働基準法の定める労働時間規制は、長時間過重労働から労働者を守る最低基準であり、最後の砦である。同法のもとですら労働者は、産業、業種、職種、雇用形態を問わず、長時間かつ過重な労働にさらされているが、「新しい労働時間制度」は、労働時間の最低基準を画する労基法を無視し、長時間労働傾向をさらに悪化させる重大な危険を有するものである。それは、労働者の健康も破壊し、個人と企業の健全な成長も阻害して、ひいては日本の社会と経済に重大な害悪を生じさせるものである。

 日本労働弁護団は、産業競争力会議経済財政諮問会議等による恐ろしい残業代ゼロ・時間規制提案について、広く警戒を呼びかけるものである。

以上

団体交渉はただテーブルにつけばいいのではない

1、昨今のリストラとリコー事件の経過

東京管理職ユニオンは、1993年の結成以来、中高年リストラと対峙してきました。中小企業では依然として解雇が頻発していますが、大企業では時代ごとに新手の退職勧奨を編み出し、リストラを推し進めています。リコー事件は、2009年末のリーマンショック以後に頻発している「追い出し部屋」型の陰湿なリストラの典型例です。

財界・経営法曹・経営コンサルタントの一部は、日本における解雇法理の制約を嫌い、人事権を悪用し、自らの経営責任を取ることもなく、退職勧奨型のリストラを仕掛けてきました。以前の方式は、「あなたは無能である」として、降格降級・賃金ダウンを伴った「窓際」への異動でした。しかし近年の方式は、いったんは賃金条件を下げることなく、「あなたのため」と説明し、出向・配転の業務命令を発します。その後、それまでのキャリアとギャップがある業務であるにもかかわらず、過大あるいは過小な業務改善計画を設定(PIP)され、低く人事考課され、ジリジリと労働条件が切り下げられるという狡猾なやり口です。

リコーでも長年にわたって会社に貢献し、評価されてきた従業員を、合理的な理由もなく、恣意的にターゲットにして、執拗に退職勧奨を繰り返しました。そして拒否した従業委員に対しては、キャリアに見合わない肉体労働や単純労働の現場に出向・配転させ、心を折ろうとしました。そして今も、組合員らは肉体労働・単純労働現場故に閉じ込められ、いくら頑張っても目標達成できない理不尽な人事考課に苦しめられています。

東京管理職ユニオンは、このような出向・配転は、労働契約法14条が定める要件等を満たさず無効であると判断し、原職復帰を求めて団体交渉を重ねてきました。しかし、リコーは代理人弁護士(石嵜・山中総合法律事務所)と一体になって、団体交渉において客観的な根拠を一切示さず、ユニオンとの合意形成努力を怠り、出向・配転は人権の範囲内で有効であるとの持論に固執し、不誠実な対応を繰り返しました。これに対してユニオンは2012年2月8日に東京都労働委員会に不当労働行為救済申立を行ったものです。


2、リコー事件勝利命令の主文

 東京都労働委員会が交付した命令の主文は以下のとおりです。

1 被申立人株式会社リコーは、本命令書受領の日から1週間以内に、下記内容の文書を申立人東京管理職ユニオンに交付するとともに、同一内容の文書を55センチメートル×80セントメートル(新聞紙2頁大)の大きさの白紙に、楷書で明瞭に墨書して、会社本社内の従業員の見やすい場所に、10日間掲示しなければならない。

     記

     年     月   日

東京管理職ユニオン
執行委員長 鈴木 剛 殿 

                    株式会社 リコー
                    代表取締役 三浦 善司

 当社が、平成23年10月14日、11月24日及び12月26日に行われた貴組合との「人選理由と過去の人事考課の開示」、「事業再編に関する説明」及び「希望退職者の応募結果の開示」を協議事項とする団体交渉において、誠実に対応しなかったことは、東京都労働委員会において不当労働行為であると認定されました。
 今後、このような行為を繰り返さないように留意します。
 (注:年月日は文書を交付又は掲示した日を掲載すること)

2 被申立人会社は、前項を履行したときは、速やかに当委員会で文書で報告しなければならない。

3 その余の申し立てを棄却する。
 
 リコーは、団体交渉で提出しなかった資料を裁判で提出するなど、ユニオンとの団体交渉を軽視する態度を示しました。その裁判において出向無効が示されたことを考えれば、本件命令の通りに団体交渉が誠実になされていれば、早期解決を勝ち取ることも可能だったと考えられます。

 なお、陳謝文(ポストノーティス)が命令で出されるケースは決して多くなく、リコーの対応がいかに悪質であったかということを示したものです。リコーは命令を不服として中央労働委員会に再審査の申し立てをしましたが、地方労働委員会の命令は労働組合法第27条の15により効力を失わないため、命令を履行しなければなりません。


3、リコー事件勝利命令の意義

 東京都労働委員会は、本件命令書において、誠実交渉義務について以下のように原則を示しています。

 使用者は、自己の主張を相手側が理解し、納得することを目指して、誠意をもって団体交渉に当たらなければならず、労働組合の要求や主張に対する回答や自己の主張の根拠を具体的に説明したり、必要な資料を提示するなどし、また、結局において労働組合の要求に対し譲歩することができないとしても、その論拠を示して反論するなどの努力をすべき必要があるのであって、合意を求める労働組合の努力に対しては、このような誠実な対応を通じて合意達成の可能性を模索する必要がある。(19頁)

 ユニオンとの団体交渉において、単に話を聞くだけのような不誠実な態度に終始する経営は後を絶ちません。これは上記の誠実交渉義務に反するものです。また弁護士がミスリードし、団体交渉を事実上忌避し、戦術的に裁判や労働審判に移行させる傾向も強まっています。中には債務不存在訴訟や嫌がらせの損賠訴訟(スラップ訴訟)を打ってくる事件も多発しています。これに対してユニオンは、毅然として、こうした経営側の態度を許すことなく、まさに本件勝利命令にある誠実交渉義務を前面に掲げ、団体交渉を実効化させなければなりません。

 冒頭に述べた経営側による新手のリストラと対峙し、これを打ち砕くためには、また団結した組合員の要求を勝ち取るためには、ますます団体交渉において緻密に経営側の論理矛盾を明らかにする必要があります。そのためにも、ユニオンみえの鈴鹿さくら病院裁判(3面参照)で明確にされたストライキ権等の団体行動権を行使することと並び、団体交渉権を適切に発動し、闘ってゆかなければなりません。本件勝利命令は、リコー闘争の勝利に向けて前進するものであり、あらゆる要求闘争にとって武器となるものです。

2013年→2014年①

2014年を迎えました。
昨年1年間、お世話になった多くのみなさん、ありがとうございました。
このブログを始めたときに書き記し予想したように、多くの困難と直面した1年間でした。しかし、「リコー“追い出し部屋”事件の勝訴(11月12日に勝訴判決)」と「ガソリンスタンド職場占拠・自主営業〜労働者協同組合e-Revolutionaryの立ち上げ」は、人々にとって活用・参照できる選択肢・可能性を示すことができたと考えています。

リコーとの闘いは会社側の控訴によってまだ続いています。肉体労働現場に出向・配転させられた組合員達は、かれこれ2年半近く耐えています。労働者協同組合も経営を軌道に乗せる途中過程にあり、大晦日も懸命に組合員達が働いていました。従って予断を許さず、より困難な2014年を迎える訳です。ですが、圧倒的メガカンパニーのリストラに対して名もなきサラリーマン達が徒手空拳から団結して抵抗していること、カネも資産も人脈もないスタンドのにーちゃん達が職場を自分たちの手に入れて地域のお客さんに喜んでいただき経済活性化させていることは、胸を張れることでしょう。一つの実践であり、幅広く活用できるシステムでもあります。

2014年、私は、仲間たちと手を尽くし、多くのみなさんの力をお借りして、これら事件の解決をはかりたいと考えています。そして、さらに第2、第3の“事件”と出会い、見つけ、紹介され、相談され、相談し、接合し、工作し、こうした抵抗と対抗策の必要性について左右を問わず、語り、説得し、ときに糾弾し、ときに道化になり、とくに別れ、鵺の如く振る舞い、拡げてゆきます。

「倒産GS従業員が再建へ 労組メンバーら結束」(東京新聞9・27)

今朝の東京新聞朝刊の11面に労働者協同組合「e-Revolutionary」が大きく取り上げられています。ぜひご覧下さい。

http://www.tokyo-np.co.jp/article/living/life/CK2013092702000159.html

引き続き、出資やカンパを募集しています。
メールsuzuki@mu-tokyo.ne.jpまでお問い合わせください。